プライベートより仕事優先の俺の
突然の申し出にいつも冷静沈着の総司が
目の前で怪訝な表情を浮かべている。

「 あいにく、今週の日曜は
ゴルフコンペの予定が入っておりますので
来週の日曜からでしたらなんとか
調整できそうです。
しかし、今はホテルのオープンまでに時間もありませんし、平日の社長の残業時間が
長くなりますが宜しいですか?」


「そういえばゴルフだったな。」

可愛いかよ子さんとの約束をつぶしてオヤジどもの相手をするなんて...

俺は思わず息を吐いた。

「平日の残業は仕方ない。
あぁ~、それと婚約の話も断っておいてくれ」


「えっ!?」

総司は一瞬絶句してしまう。

そして気は確かなのかと言うように言葉を続ける。

「榊原グループとの婚約は
わが社にとってもかなりの有益に
なるとは思うのですが
本当に宜しいのですか?」

そんなの愚問だ。
婚約なんてしてしまってはかよ子さんに
アプローチなんか出来なくなってしまうではないか。


「別に榊原グループと婚約を白紙に戻したところで会社に損はない」


「そうですが...
しかしあのプライドが山のように高い
ご令嬢が大人しく受け入れますかね...
会長も黙ってないでしょうし...」


会長とは俺の母親で俺に輪をかけて
利己主義なのでかなり手強い相手だ。


「母さんがいたか...
それは面倒だか仕方がない。
トラブルの対応は
全部俺が引き受けるから
よろしく頼む」


「社長がそうおっしゃるなら...
日曜に何があるのですか?」

総司の目が興味津々と物語っている。

こいつにかよ子さんのことが知れたら絶対からかわれるに決まっている。
今は適当に誤魔化しとくほうが得策だろう。

「あぁ、
どうしても物にしたい案件ができたんだ」

嘘ではない。
俺は仕事のことだとも取れるような言い方で総司の詮索を回避する。


「そうですか...承知しました」


大方、総司は俺がこんなに張り切るとは
相当大きな案件なのだろうと思っているだろう。

それに俺が一人の女相手に入れ込んでるとは夢にも思っていないようだ。