一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない


かよ子さんはそんな俺の心の中での葛藤を知らず、
「じゃあ...
今夜は早く帰ってくださいね♪」
無垢な笑顔で微笑んだ。


骨抜きにされるとはこのことを言うのだろう...


そして、俺は彼女の可愛さにハァっと息を吐くと、そのままかよ子さんの肩に突っ伏した。


俺はいつかかよ子さんの笑顔に
殺されてしまうかもしれない...


「...神崎さん...」


かよ子さんが肩に突っ伏したままの
俺を柔らかい声で呼び戻そうとしている。


ああ...俺にはその柔らかい声さえも
俺の心をグッと掴まれて
窒息してしまいそうになる...


もう、このまま二人で化石になってもいい...


しかし、次のかよ子さんの言葉で
俺は一気に現実へと引き戻されてしまう。


「あの...神崎さん、私そろそろ...」


かよ子さんは肩に突っ伏した俺の後頭部を
ポンポンと優しく叩いた。


「えっ...!?」


俺はバッと顔を上げた。


そして、ご主人様との別れを寂しがる
犬のような表情をかよ子さんに向ける。


そんな俺にかよ子さんは困ったように頬笑んだ。


「神崎さん?
今日は神崎さんの大好物の肉じゃがですよ。
お家で待ってるんで一緒に食べましょうね」


かよ子さんはそう言って和やかな笑みを浮かべた。

「ああ、うん...」

そんなかよ子さんに俺は決まり悪そうに
言葉を濁した。

かよ子さんは出会った時に
俺が肉じゃがが大好物と口走ったことを
いまだに信じている...


流石に人参が苦手だなんて
今更、言い出しにくいよな...


俺は後ろめたそうにチラッとかよ子さんに目を向けた。


かよ子さんはキラキラと瞳を輝かせながら
俺を見つめている。


何でそんなに可愛い過ぎるんだよ...


俺は思わず参ったなというように小さく笑った。




「じゃあ、頑張って早く終わらせるよ」


俺の言葉にかよ子さんは「はいっ」と満面の笑みでこたえた。