こうなったら、
神崎さんが会社に行ってるときに
コッソリと様子を見に
帰ってしまおうかな...


私がそんなことを企んでいると、
「コッソリ帰ろうだなんて考えないでね...」
神崎さんがフッと不適に微笑んだ。


私はギクりと肩を震わせる。


えっ...私、心の声、漏れてた...?


私のコメカミにたらーっと冷や汗が伝う。


すると、
「かよ子さんは思ってること
顔に出すぎるからね...」
神崎さんはそう言いながら笑いをこらえている。


私ってそんなに思ってること顔に出てる子だろうか...?



私は恥ずかしさに赤らんだ頬を両手で覆った。


「かよ子さん...?
もし、勝手にアトリエに戻ったら...
そうだな...」

神崎さんは少し考えてから
「僕の専属の秘書としてずっと
そばに置いておくから...」
と私に向かってニヤリと微笑んだ。


「冗談ですよね...?
そんなの出来るわけないですよ...」


「僕はいつでも本気だよ♪
しかし、我ながら名案だな...
絵も完成したことだし、
かよ子さんが僕の専属秘書...
いいかもしれない...
それなら、ずっと一緒にいられるし...」


ブツブツと考え込んでいる神崎さんは
本当に私を秘書にしてしまいそうな勢いだ。



「ぜ、全然良くないです!!」


私は身の危険を感じてサッと前に向き直る。


「とても、良い案だと思うけど...」

神崎さんはまだ諦めきれていない様子だ。

「あっ!!ホテル見えてきました!!
さっ!この話はもう終わりです!!」

私はホテルの方を指差して
必死で話を遮る。


秘書なんて冗談じゃないです...

私は流れる冷や汗をハンカチで拭う。


「いっそのこと、社長室の横に
かよ子さんの仕事部屋を作ってしまおうかな...」

神崎さんはブツブツと呟きながら
車はホテルの駐車場へと入っていった。