「あ、あの...それで...夜のことなんですけど...」


私はデニムパンツの布地を掴むと
シワになりそうなほどギュッと握り締めた。


「ハハッ...

それでさっきから様子がおかしかったのか...
んー...でも今夜は我慢できそうにないから...」


神崎さんは「ごめんね...」と
チラッと私に目を向けて困ったように微笑んだ。



やっぱり子どもじゃないんだから
こんなことで羞じらって
ウジウジと悩んでる場合じゃないよね...


でもやっぱり怖いものは怖い...


こんなことなら瑠花さんに恥を忍んで
相談しておけば良かった...


少しは気持ちが楽になったかもしれないのに...

私がうつむいたまま、
決意と優柔の狭間で迷走していると
そんな私の気持ちを察したのか
神崎さんが口を開いた。


「かよ子さんがまだ気持ちが固まらないのなら無理強いはしないよ。
だから、今日は二人の時間を楽しもう」


神崎さんは私を安心させるように
「ねっ?」
と優しい笑みを向けた。

私は安堵して「はい...」と目を細めた。


神崎さんの優しさに
さっきまでの不安が溶かされていく...


きっと...
神崎さんと想いが通じたときから
心の奥底ではすでに決意はできている...


夜までまだ時間があるのだから
あとは自分の気持ちに任せるとしよう...


折角、神崎さんが私のために
デートを企画してくれたのだから
今は楽しむことだけ考えよう...


それから、私は期待に胸を弾ませながら
窓の外の流れる景色を見つめた。