Side翼

「んんっ...」


俺は窓から射す陽の光に顔を歪めると
重い瞼をそっと持ち上げた。


隣にはスヤスヤと気持ち良さそうに
寝息をたてて眠るかよこさんの姿があった。


昨日は帰ってすぐにご飯とシャワーを済ませるとまだ陽が沈まないうちに二人で眠ってしまったのだ。


何時間眠っていたのだろうか...


未だに目を覚まさないかよ子さんは
相当疲れていたのだろう...


かよ子さんの真っ白な肌に少し赤く腫れた瞼がチクッと胸に刺さり、愛おしくてたまらなくなる。


かよ子さん...不安にさせてごめん...


俺は思わず、かよ子さんの顔に手を伸ばすと
赤い瞼をそっと指でなぞった。


そして今度は、
かよ子さんの頬に自分の指の甲で
優しく押すとマシュマロのようなふんわりと柔らかい肌が俺の指を押し返す。



一瞬、かよ子さんは目をつぶったまま
フフッと小さく微笑んで、再び寝息をたて始めた。

楽しい夢でも見ているのだろうか...

その不意打ちの可愛さに俺もフッと頬を緩める。


なんでこんなに可愛いのだろう...


俺は今度はかよ子さんの長く艶やかな黒髪に
手を伸ばした。

一束すくってみると、まるで絹糸のように
サラサラと俺の指をすり抜けていく。


すると、俺の指から落ちた髪が
かよ子さんの頬にサラリと掛かり、
かよ子さんは顔をギュッと歪めた。


そして、ゆっくりと目を開けると
黒く透き通った瞳で俺を見つめる。



少しの間、ぼぉーっと
眠気眼で俺を見つめていたかよ子さんだったが、一気に状況を把握すると、
「いつから見てたんですか...!?」
と、恥ずかしげに顔をシーツにうずめた。


そのしぐさが、あまりにも可愛いくて
自分の心臓がつぶされてしまうのではないかと思ったくらいだ。