「な、なによ?
これでもかなりハードル下げてるのよ?」

凪沙は頬を膨らませながら、不貞腐れている。


「それのどこがハードル下げてんだよ?
お前、その傲慢な性格を治してから
出直してこい!」


「同感です...」


俺の言葉に総司が小声で賛同する。


「うぅ~...
もお、分かったわよ!
じゃあ、私の行動に
口出ししないってとこだけでいいわよ!」


「よし!交渉成立だ!
また日にちと場所が決まったら
連絡するから。
これが終わったら、もう俺に付きまとうなよ?」


「ハイハイ、分かったわよ!
それじゃあ、これが私の連絡先だから!」


凪沙は名刺入れから
自分の名刺を1枚取り出すと
俺の前に差し出した。

俺は凪沙から名刺を受け取ると
上着の内ポケットにそれをしまう。


「それから、
かよ子さんにもあんまり付きまとうなよ!」


「だから、友達だって言ってんでしょ!!」


「すみませんね...凪沙さん。
うちの社長、独占欲強いもので。」


「女の私にまで焼きもち妬いてんの!?
そこまでくると異常ね!」


凪沙はまるで蔑むような目付きで
俺をみている。


「...凪沙さん...それは禁句です」


総司がヒソヒソ声で呟きながら
口の前で指をバッテンにしている。


「お前...それが人に仲介役を頼むやつの態度か?」


人を馬鹿にしたのうな二人のやり取りに
俺は額に青筋を浮き立つ。


俺の憤怒の形相に、凪沙はヤバイといわんばかりにサッと前を向くと腕時計を見つめて口を開いた。


「あら!もうこんな時間だわ!!
私、そろそろ帰らないと!
じゃあ、セッティングは宜しく頼んだわよ!」


凪沙はそう言って助手席のドアを開けると
逃げるように去っていった。


「はぁ...嵐のような女だな...
総司、仲介上手くいくと思うか?」


「余程のドMを探すしかないでしょうね...」

あんな我儘な女をもらってくれる
辛抱強い男は果たしているのだろうか?

俺は嫌な予感に大きくため息をついた。