Side翼

かよ子さんの看病のかいあって
すっかり元気になった俺は
次の日から更に仕事に打ち込んでいた。

早くかよ子さんとゆっくりと
話す時間を取りたい一心だった。


「総司、この日曜日は本当に休めるんだよな?」


俺は社用車の後部座席に乗り込むと
続いて隣の席に乗り込んできた総司に
待ってましたと言わんばかりに畳み掛けた。


「社長、しつこいですよ!
今週の日曜は休みと何度言ったら気がすむんですか?しつこい男はかよ子さんに嫌われますよ」



「毎回、一言余計なんだよ!
お前が最近、土日に色々と予定を
ぶっこんでくるのが悪い!」


ミラー越しに運転手が「あの~行き先は?」と困った様子で聞いているが、二人は気づくことなく会話を続ける。


「あー、そんなこと言うんですかー
先日、身を呈して社長のピンチを救ったのは
誰でしたかねー?
お陰でエロ社長にアフター付き合わされて
女の子にモテモテで大変だったんですからね?」


「満喫してんじゃねえか!!」


「僕はかよ子さんみたいな清楚で可憐な女の子がタイプなんで派手な女は対象外ですから...
なので、さっさとかよ子さんに振られてください。後がつかえてますんで。」


「かよ子さんはお前にだけは絶対やらん!」


後部座席で俺と総司がギャーギャーやりあっていると急に助手席のドアがガチャリと開いて少しきつめのムスクの香りと共に
長い巻き髪の女性が乗り込んできた。


突然のことに俺と総司がギョッと眉をひそめていると
「やっと捕まえたわよ!」
そう言ってサングラスを取って
振り返った女の顔を見て思わず俺達は
ゲッ!!と叫んだ。


助手席に乗り込んできた女は榊原凪沙だったのだ。


「あんたたち、ほんと失礼きまわりないわよね(怒)」


そんな二人の態度に凪沙はピキッとこめかみに青筋を立てている。