「かよ子さん、ごちそうさまでした」


お粥を完食した神崎さんに私は嬉しくて顔を緩める。


「お粗末様です。
それじゃあ、片付けてくるので
今日はゆっくり休んでくださいね」


そう言って、私は椅子から立ち上がろうと
腰を上げた瞬間、
「待って」と神崎さんに手首を捕まれた。


「かよ子さん、寝付くまでそばにいて...」

神崎さんは懇願するように私をみつめている。


「えっ?」


「ダメかな...?」


子どものように甘えてくる神崎さんが可愛くて
思わずフッと微笑んだ。

「いいですよ」

そして、再び椅子に腰を下ろした。


「ありがとう...」


神崎さんは満足したように、ベッドに体を倒した。


そして、私の前に左手を差し出した。


私は神崎さんの手を取って握り締めると
「おやすみなさい」
と言ってニコッと微笑んだ。


「かよ子さん、おやすみなさい」


神崎さんは安堵した表情で微笑むと
私の手を握ったまま、気持ちよさそうに眠りについた。


この幸せな時間には終わりがくるのかも
しれないけど、神崎さんが幸せならそれでいいのかもしれない...


神崎さんの幸せなそうな寝顔を見ていると
そう思えてくる...


神崎さんが笑っていたら、嬉しいし、
神崎さんが辛そうな表情を浮かべていたら
自分のことのように悲しくなる...


きっと凪沙さんなら神崎さんの
すべてを受け止めてくれる気がする...


私はひとりでも大丈夫...


神崎さんが幸せなら大丈夫...


今までだってちゃんと一人でやってこれたじゃない...


急に私の視界が涙で滲んできて
ポタッと二人の繋いだ手に涙が流れ落ちた。


私はそっと繋いだ神崎さんの手をほどくと
お盆を手に寝室を出て行った。