一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

私は近くの画材店で
必要な道具を買い揃えた後
購入した画材道具を手に重い足取りで
正面玄関の自動ドアをくぐった。


婚約者のことを考える度に胸は苦しいけど
引き受けた以上、絵は最後まで
完成させたい...


それが神崎さんとの約束だから...


例え神崎さんが他の女性と結婚するとしても
神崎さんが私を救ってくれたことは
確かなのだから...



私はうつむき加減でエレベーターへと足を進めた。

その時、
ドンッと誰かに思い切り肩をぶつけてしまう。




バサバサバサッ


その拍子に持っていた袋を落としてしまい
中に入っていた絵の具を、思いきり床にぶちまけてしまった。


「す、すみません!」


私はぶつかった相手に慌てて頭を下げるとしゃがみこんで、散らばった絵の具を拾い始めた。


「いや、僕も前を見てなかったので
すみません!」


ぶつかった相手は男性だったようで
向こうも一緒になって絵の具を拾いだした。


「はい!」


スーツを着た男性は可愛い笑顔を向けて
私の前に拾った絵の具を差し出した。


清潔感のある少し明るめのサラサラヘアーと
親しみやすい可愛らしい笑顔が印象的な男性だった。

受付嬢達がキュンとしながらこちらを見ていることにも気づかず
私は恐縮しながら「あ、ありがとうございます...」と呟いた。