「行ってきます」

 ドアを開けて外へ出る。風が動く。冷んやりした空気がシャツの襟元から潜り込んでくる。

 カレンダーは十月に変わっても、つい先日まで蒸し暑く感じる日も多かったのに、いつの間にか夏は別れの挨拶も残さないで、彼を待つ国々へと旅立ってしまったらしい。