「でもね。青バラは本当は青くなんかないのよ」

 思いっきり矛盾している。青くない青。赤くない赤。青空は青くない。いや、それは違うだろう。青いから青空なんじゃないか。さっぱり意味が分からない。

 早希(さき)はよくこんな言い方をして僕を惑わせる。そして僕は、彼女が待ち構える惑いの海で、哀れにも溺れてしまうのだ。