インターフォンを鳴らす。いつこのようにすぐに元気な声で応答があり、ガチャっと玄関ドアが開いた。

「またまた遅刻だよ。お兄ちゃん」
「えっ。そんなはずは・・・」

 慌てて腕の時計を見る。すると悠歩(ゆみ)ちゃんの指摘どおり十分も遅刻していた。おかしい。予定どおりの時刻に家を出て電車に乗り、途中でトラブルもなく駅に着いたのになぜだ。

「また歩きながら考えごとをしていたんでしょう」
「ああ。うん」
「歩きながらは危ないよ」
「そうだね」