聞いてくれないと、何だろう。その後に何が続くのかな。泣いちゃうとか?まさか引っ叩くとか?しかし早希は何も言わず、しっかり握った僕の手を引いて朗読会場に戻り始める。僕は早希に手を引かれ、大人しく後をついてゆく。

 あの吐き気は嘘のように消えていた。数週間の間、僕を苦しめていた悩みは、早希の怒鳴り声に吹き飛ばされ、どこかへ行ってしまったようだ。いなくなった苦しみの代わりに僕の胸を温かな幸せで満たしたのは、早希からの、大好きという言葉だった。