「いい眺めですね。僕と朝佳さんの邪魔をしていた人間の亡骸の前で、こうして幸せな時間を過ごせるんですもの」
男は長いまつ毛を伏せては
「誓いのキスでもしましょうか?」と呟き
わたしの意見を聞くことなく、唇を奪った。
絶望というものは、こういうことを
いうのだろうか。
誘拐監禁殺人
そのすべてを、わたしのためだけに
行えてしまう男。
楽しげに、誇らしげに、満足気に
わたしにペラペラと話せてしまう男。
そんな男にわたしは
想われて
想われて
想われて
「う…っぇ」
胃のものがせり上がってきた。
恐怖がだんだんと、絶望に塗り替えられていく。



