おとぎの檻




「僕は貴女のストーカー。何年も前から
朝佳さんに心酔してきました」



怖いですか?と訊かれ

なにも答えることができない。



「好きで好きでたまらなくて、朝佳さんの情報を集めまくった。カメラだって盗聴器だって付けた。貴女のすべてを知りたくてしかたなかった。知らないことがあるだけで狂いそうだった」



そう言いながら、狂ったように
キスまみれにされる。


首筋に鎖骨に胸もとに。
おかまいなく紅い花を散らされた。




「覚えていませんか?駅のホームで僕が話しかけたこと。あのとき僕、朝佳さんが覚えやすいように白いコートを着ていたんですよ」



駅の、ホーム…


だめだ。どんなに記憶に手を伸ばしても、
なにも思い出せない。


反応が薄いわたしに、男は妖しく
息を漏らした。



「ま…覚えていませんよね。貴女を監禁してからずっと、薬を使って眠らせていたのですから」


「薬っ、て…んぅ」



喋るひまなんか与えてくれない。


でも薬と聞いたら覚えがある。


まどろみの中、キスの合間に甘い液体を
飲まされた。


もしかして、あれが…