「羽花?」


 雷斗くんの声で名前を呼ばれ、身体中に彼の声が流れていく。


「もしかして、俺の事好きになっちゃった?」


 左手で頬杖をつき私の事をジィっと見つめてくる。漆黒の瞳に囚われたかのように身体が動かない。


「あ、あのっ、そのっ……」


「ははっ、んな事あるわけないか。俺もう腹一杯だから後は全部羽花が食べちゃっていいよ。風呂入ってくる」


「あ、ありがとうございます……」


 好きになっちゃった? と聞かれて私はなんて答えようとしたんだろう。自分でもよく分からない。ただただ胸の鼓動がうるさかった。


 私が変な態度をとってしまっていたのかもしれない、一瞬見せた眉間にしわを寄せた寂しそうな表情、明らかに今日の雷斗くんはいつもと違ったような気がする。いつもって言うほど一緒にいるわけじゃないけど、それでもたった二日しかまだ一緒にいないけど、なんとなくいつもの雷斗くんじゃない気がした。