『だから焼きそばパンは・・・』

「レポートだよ、レポート!」


ギロリと睨まれた。
般若に。

これ以上、間違えてはならないあたしは大急ぎで手に持ったままだったレポートを彼の右手の上にそっと載せた。


「しんりんまお?」


レポートの表紙を凝視している
般若・・・いえ、岡崎先生のまさかの名字読み間違い



これは訂正したほうがいいのかな?
でも、間違いを指摘して怒りを倍増させたら完全に地獄行きだろう

でも、間違えられたままというのも・・・

どうしよう・・・





「岡崎センセ~イ、彼女、かんばやしまおって言うんですよ~」


あたしの躊躇いを知ってか知らずか、隣にいた絵里奈が躊躇うことなく、岡崎先生に正しい読み方を伝えてくれた。


やばい
今度は絵里奈が危ない

担当指導教官ではないとはいえ、絵里奈まで岡崎先生に睨まれたら、実習残り18日間、ふたりで路頭に迷ってしまうではないか

でも、絵里奈は間違っていない・・・





「そうなんだな、戸塚さんだっけ?教えてくれてありがとな。」

そう言いながら絵里奈に見せた般若のまさかの優しさ溢れる笑顔。

「は~い♪どういたしましてですう~」

絵里奈も羨ましいぐらいニッコリと笑ってる!
彼女の身を心配したことを後悔するぐらいに。


岡崎先生が初めての見せた笑顔の相手が
担当学生ではない絵里奈

くそ~
なんなんだ?


「おい、まお。」


さっきまでの絵里奈に対する優し目の声とは180度異なるぶっきらぼう100%の男の声。


しかも、“まお”ってあたしのこと?!

まおって呼び捨て?!
名前の呼び捨てって、あたしの中じゃ、家族にされるとか仲のいい友人だったり・・・そういう人がするもんだと思っているのに