「今日は、これから症例レポートを作成するにあたってケースバイザー(症例レポートを作成するサポートをしてくれる指導者)について見学するように。」

「えっ?松浦先生がバイザーじゃないんですか?」

「僕はキミのスーパーバイザー。実習責任者ということ。実習全体を見る人なんだ。神林さんのスーパーバイザーは岡崎だね。」

「・・・そうなんですか・・・」


朝、作業療法士だけでなく理学療法士や言語聴覚士の先生達が電子カルテを確認しながら、お互いに情報交換をしていてバタバタザワザワしているリハビリスタッフルームの中。
その中にあたしと絵里奈もいる。

ようやくこのざわつく環境にも少し慣れてきた今日この頃。



そんな中、松浦先生とは別の先生にも関わらなきゃいけないことを告げられ、
他人のあたしから見ても明らかにがっかりしている絵里奈。

彼女が松浦先生に絶対的信頼を置いている様子は恋愛にうといあたしでも手に取るようにわかっていたから、これからの絵里奈がちょっと心配になった。

そして朝礼後、松浦先生からリハビリスタッフを紹介された。


「まおさん・・じゃなくて、神林さんのケースバイザーになりました下柳です。」

「私は戸塚さんのケースバイザーの長野です。」

松浦先生や岡崎先生よりも若い作業療法士さん。
ちなみに下柳先生は男性、長野先生は女性。



「じゃあ、今日はそれぞれケースバイザーについて見学するようにしてください。」

「まお、邪魔すんなよ。」

「伊織、お前、もう少し言い方ってものがあるだろ?」

「俺にしては、まだ丸いほうじゃね?」

「微妙だな。」


スーパーバイザーのお兄さんコンビは涼し気な顔してじゃれ合いながら、あたし達の前から消えて行った。