「神林さん?どうした?」

「真緒?!」


突然の松浦先生と絵里奈のあたしを呼ぶ声が聞こえたせいか
今日のレポートがよだれではなく
こぼれ落ちた涙で濡れてしまった。


「なんでバツがつけられたのか、なぜ俺に聴かない?」

『・・・えっ?』


追い打ちをかけるように岡崎先生は冷たい声であたしにそう問いかけた。


「大切なことだ。なんでという疑問に自分から向かっていかなきゃ、患者が救われない。」



吐き捨てるようにそう言って岡崎先生はあたしをぐっと睨んでからスタッフルームから出て行ってしまった。


一生懸命やっているのに
岡崎先生から授けられるのはネガティブな内容ばかり

臨床実習は厳しいって大学の先生達にも耳にタコができるぐらい聞かされていたけれど、なにが厳しいのか、わかっていなかった

でも、この実習をクリアしないと卒業できないところか
4年生にも進級できない
作業療法士の国家試験がどんどん遠のく


そうやって焦るあたしは
岡崎先生が自分をどうしたいのかわからないまま
この日も目的意識を持てずにリハビリ見学をしていた。


そんな中、絵里奈が松浦先生の指示の下で、患者さんの関節可動域(関節が動く角度)の計測検査をやり始めていた。


ただ見学しているだけのあたしと
患者さんに実際に触れる検査をやり始めた絵里奈

同じ実習生
しかも、同じ大学で学ぶ友人との差を
感じずにはいられない


なんで?
どうして?

あたしはどうしたらいいの?

また泣きそうだ

こぼれそうな涙を拭おうとした瞬間だった。




「あいつ、不器用だな。焼きそばパンをこぼさずに食うのは上手なのにな・・・」


えっ?
誰?!