あの日、貴方との出会いが私の人生を変えた。

 ロマンス小説のように運命的だったわけでも、一目惚れでもなく、ただの偶然だった。

 


 私は、ヴァイオレット=ロロノア。
 一応、伯爵令嬢だ。

 一応というのは私がいらない娘で、伯爵つまりお父様にとっては使い捨ての道具に過ぎないから。

 だから、私のものは最小限のドレスとアクセサリー、そしてお母様の形見のブローチだけ。

 屋敷に居ても誰とも会話をすることもなく、自室か、図書室に籠もっている。

 会話をするのは、命令があった時だけ。

 順従なもののように、誰かが操るマリオネットのように、私は命令をこなす。

 その命令について疑問や意見、考えを持っては、言ってはいけない。

 幼い頃、お母様を亡くしてからずっとしているから慣れている。

 というより、自分のしたいことがなくて、何をすれば良いのか分からなくて、私は命令を聞いてしか行動ができにくくなっていた。

 

 ある日私は執務室に呼ばれた。

 「今度の茶会に行ってこい。お前はあれに似て
 顔だけは良いからな。それを使って伯爵以上の
 子息を誑かせろ。良いのがいたらマリアーヌに
 会わせて、気に入れば婚約させる。」

 「分かりました、伯爵様。」

 粛々とその指示を受け入れる。それ以外の選択肢は用意されていない。

 ちなみにマリアーヌとは2個下の私の義妹だ。

 彼女は後妻とお父様の娘で、私とは異母姉妹。

 艷やかな髪はハニーブロンドで、貴族らしい原色の青色の瞳。身体は女性らしく丸みを帯びて、肉感がある。