「お前…よくそんな口を叩けるな」

「どういうこと?莉音は私に何を隠しているの?」

私はそう尋ねた。なぜ彼がこんなにも怒っているのかが分からなかった。

よく考えて少し思い当たったのは、…あの封筒。

もしかしたらあれをよく見れば、何かが分かったかもしれない。

「その口、塞いでやろうか」

私の唇に触れたのは、莉音の唇…ではなく、鋭利なナイフだった。

その途端、一気に冷や汗が出てくる。身体が凍ってしまったかのように動かない。

「…私が、何をしたっていうの」

私は被害者なんじゃないの。浮気をしたのは莉音のほう。私は何も…

「覚えてないのか?少しも?」

彼の目を見て、足の力がガクッと抜ける。その殺気は、きっと人を射殺せるくらいの威力があるはずだ。

でも彼は私の腕を掴み、離してくれなかった。倒れそうになる際にナイフに掠ったのか、首が痛む。擦り傷くらいだろうけれど、それでもジンジン痛かった。

「…まあいい。思い出させてやるよ」