「湊ちゃんったら……」






傍にいた心音さんがポロポロと涙を流し始めてギョッとしたのもつかの間、






「成長じだわねぇええええ!!!」



「ぅわあっ!!?」






私の隣にいる湊くんへと飛びついて、






「く、苦しっ…」






ギュゥウと力いっぱいに抱き締めてた。






「もうアンタはここの立派な従業員よぉお!!」


「うっ…」


「こ、心音さん!!湊くん死んじゃう!」


「ごめんねぇええ!!あと少しだけぇええ」







わあわあと騒がしい事務所内。




外に出ていた陽葵さんが帰ってきて、やっと湊くんは心音さんの腕から開放された。



そんな湊くんは意識が飛んでしまう1歩手前だった。







「では、明日は月姫さんの代わりに湊くんが出勤ということですね。分かりました。」






湊くんに勧められた通り、その言葉に甘えて私は明日休むことにした。



もともと休みだった湊くんが出勤するということで。






「だったら今から蒼空のところに行ってきなさい!」


「え、今からですか?でもまだ仕事が残って…」


「今の月姫ちゃんの状態じゃ、いてもミス連発しそうだもの。だからとっととその雑念を追っ払ってきてちょうだい!」






そう言って、心音さんは私にカバンを押し付けた。






「いいわよね!陽葵さん!」


「そうですね。また月姫さんが全力で働けるよう、蒼空に依頼でも出しましょうか」


「あらいいじゃない!依頼内容は"雑念を追っ払って"なんてどうかしら??」


「いいですねそれ」



「(湊くんまで……)」







3人はワイワイと楽しそうに依頼書に記入し始めた。




蒼空さんはもう、ここの従業員じゃないのにさ。






(でもまあ…)






またここで働きたいって言ってたっけ。






「じゃあ、はい!これ持って!!」


「は、はい!」


「さあ行った行った!!」






心音さんに背中を押されて玄関へ。




手には、さっき3人が書いていた依頼書を持って。






「月姫さん、気をつけて行ってらっしゃい」


「ちゃんと蒼空に渡すのよ!」






ここの事務所の人達は、1人の従業員に対してここまでしてくれる。





本当に、温かい人ばかりだと思う。





そんな中、湊くんと目が合って






「……ありがとう、湊くん」






彼がこうすることを勧めてくれたから、心の底から感謝の気持ちでいっぱいだった。






「いえ、全然。」






湊くんは目を弧にして







「行ってらっしゃい、月姫さん」






ふわりと笑ったんだ。