フワッと香る匂い



あの日、抱きしめられて眠った日と同じ匂い。




「はい、これ離してネー」




その人はテイッと私の手を掴む手にチョップをすると、いとも簡単にその手は離れた。




「あ…、蒼空さん………」




顔を見て、ホッとしてしまった。


いつもはうっとーしくてムカつくのに、
今は心が落ち着いてる。




「兄妹揃ってめんどくさいのやめてくれる?」


「あ、あなたは…昨日の………」




見るからに怯えているお兄さんに対して、蒼空さんは冷たくてとても低い声。

  


「俺らの仕事は何でも屋だし便利屋だけど、そーゆー依頼は受けてないんだわ。


彼女が欲しいなら自分で努力をするか、他のとこに依頼しろ。


……あと、2度とコイツに近寄るな」




グッと腕の力が強くなる。


低く、怒ってるような声。


いや、絶対怒ってる声。


不覚にもその言葉にキュンっとしてしまった。