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遠距離が始まって1ヶ月が過ぎた。



電話の回数もはじめに比べれば格段に減って、そろそろ会いたいと思う気持ちが募っていた時






『土曜日、会える?』





蒼空さんからその連絡が。



それを目にした時

ベッドから飛び上がってガッツポーズをした。





その週は毎日顔がニヤけていたみたいで、




「こわっ……」



なんて。千恵にドン引きされるくらい、頬が緩みっぱなしだった。





だって会うの1ヶ月ぶりなんだよ?


会える日が日に日に近づいていると思うと、嬉しくてたまらない。











────そして、






いよいよ明日が蒼空さんに会える日。



その日が楽しみで楽しみで仕方がなかったにも関わらず……






「ケホッ、ケホッ」






なんで私、体調崩してるんだろう。



熱を測ってみれば38.6°という数字を叩き出してしまったし、身体は怠くてベッドから出る気にならないし。





(とりあえず千恵に連絡して…)





「ケホッ」っと咳き込む中、熱で大学に行けないとの連絡を入れる。





この状態が夜まで続けば

明日は蒼空さんに会えないかも。






(…それはヤダなぁ……)





やっと会えるのに。


その日をどれだけ待ちわびたか…。





早く病院に行って薬を貰わないと。

そう思っても、身体が言うことを聞かず。




身体は怠くて
しかもすごく眠たくて



口から出る吐息は自分でも分かるくらい熱い。







(とりあえず、この眠気を……)






考えるよりも先に脳がシャットダウン。



目を覚ました時には既に15時を過ぎた辺りで






「えっ!?」





当然驚いて飛び起きるけど、フラッと目眩がしては再びベッドへと倒れ込んだ。






(ああ、そうだった…)





……熱があるんだっけ。



忘れていたその事を思い出し、
本日2度目の計測。



体温は変わらず高くて





(とりあえず薬貰わないと、)


しんどいとか言ってられない。







ふらつく身体で外に出る身支度をし、病院へ。



歩いて行ける距離にあって良かったと心の底からそう思った。



診察を受けて薬も貰い、さあ後は帰るだけ。




帰りも同じ道だというのに

何故か行きよりも距離が長く感じた。


息切れのように呼吸が乱れる。





(早く帰って、ちょっとご飯食べて、薬を飲んで、それから…)





頭では理解出来ているのに

身体が言うことを聞かない。



今にも倒れそうな身体でやっとマンションに辿り着いたのだけど、私の家は階段を2階分上がったらある場所で






(かい…だん……)






初めてその階段を憎んだ。



何段か上がった先で

座り込むようにして壁にもたれ掛かる。






(ダメだ…もう動けない、)





あと少し頑張れば

家はもうそこだというのに




「はぁ…」と漏れる吐息は変わらず熱い。







(…………あぁ、また…)






…眠くて仕方がない。








遠のいていく意識の中、


目を完全に閉じてしまう少し前


薄らと見える視界には






(…誰、だろう……)






私の名前を呼ぶその人。


顔は見えなくて


その人は私の腕を引く。





身体がふわりと宙に浮いた辺りから


私の意識はなくなってしまったらしい。