(それにしても蒼空さんは一体どこに……)





千恵も最後に一目見たいって言ってたんだけどなぁ…






キョロキョロと周りを見渡すけど、見渡す限り袴を身につけた卒業生やスーツを着た男の人しか見当たらない。







蒼空さんがいたら
すぐに分かると思うんだけど…







だって、あの人、凄く輝いてるから。
それはもう眩しいほどに。



しかも今日はスーツを着ていると思うし、輝きMAXレベルだと思う。






「桜井くんどこにいるんだろう?」


「ね~ 最後に写真撮って欲しいんだけどなぁ」



(わあ…ほんと、モテるなぁ)






すれ違う人からはそんな話題ばかり。



みんな蒼空さんのことを探しているらしい。






「私ボタン貰っちゃおうかな!」


「私はネクタイが欲しい!」


「ずるい!私も!!」






高校生か。そうツッコミを入れたくなるような話まで繰り広げられている。




蒼空さん、ここは危険だよ。

きっとこの場に蒼空さんがいたら身ぐるみ全部剥がされそうな勢いだよ。








(そうだっ、電話掛ければいいじゃん)






なんで早くからそうしなかったんだろう。





自分に呆れながらも、
蒼空さんに電話を掛けた。








ワンコールが過ぎたあと、






"もしもし "


「あ、蒼空さん。今どこに───」






校舎の影に入った途端、






" 「ここ。」 "


「っ!!」






電話越しと、
それから近くで蒼空さんの声が聞こえた。



パッと振り向けば、校舎の壁に寄りかかる蒼空さんの姿があって






「眩しい……」


「は?ここ影だけど」







この場所が、じゃなくて、あなたが眩しいの。



だって、スーツ姿の蒼空さんを間近で見るのは初めてだから……







「なんでここにいるの?
みんな向こうで集まってるよ?」


「……動けねーんだよ」


「ああ…もしかして、あれ?」






あれとは、外にいる卒業生達のこと。

まあ……蒼空さんのことを探している人達だ。







「そーいえば、ボタン欲しいって言ってたよ。あとネクタイも」


「高校生か」


「それ私も思った!
スーツだと、さすがにあげれないよね」








同じことを思う蒼空さんにふはっと笑ってしまう私。







「……さて、どう撒くか。」







そんな私に対して、彼は困った顔をする。




モテるって本当に大変なんだな…
てゆーか、モテ方が異常過ぎるんだってば。






「ねえ、蒼空さん。

ずっとここにいてもあれだしさ─…





私のやりたいことに付き合ってよ」








その間に、蒼空さんを探す人達はいなくなるんじゃないかと思って。