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3月下旬。
「あ!月姫ちゃんと千恵ちゃんだ~!!」
大学では卒業式が行われた。
もちろん私と千恵は蒼空さん達を祝福しに大学に来ていて、今ちょうど蒼空さんの友達と再会。
「卒業おめでとうございます!みなさん凄く綺麗です!!」
「ありがとう~!ねねっ!写真撮ろっ!!」
「是非っ!!!」
私も千恵もバレンタインのあの日から蒼空さんの友達と仲が深まっていた。
(みんな綺麗だな~)
ほんと、見惚れてしまうくらい、袴姿が似合ってる。
先輩達に会いたかったのももちろんだけど、
肝心の蒼空さんの姿はなくて
「あの~…蒼空さんは今どこに…?」
「蒼空?さっきまで一緒だったけどな~」
「そういえば、華もいなくない?」
その瞬間、ハッと気づく。
ああ、今、
蒼空さんは華さんと2人っきりだって。
『私、卒業式の時に告白します。』
バレンタインのあの日、
華さんがそう言っていたから。
(……今は探さない方がいいよね)
邪魔しちゃダメだ。
探すのは後。
そう思って、それまでは先輩達とお喋り。
少しして……
「あ、華!どこ行ってたの~」
「ごめんごめん、大事な用があったんだ」
「そなのー?その用終わった?」
その瞬間、
華さんを見ていた私と
華さんの視線が交わった。
「…………うん。終わったよ」
「っ、」
華さんの目は少し赤くて、
その姿を見るとギュッと胸が苦しくなった。
華さんには幸せになってほしい。
その想いはもちろんあるけれど……
「───えっ。月姫ちゃん!?」
「っ…………」
今ツラいのは華さんの方で
そう分かってはいる。
けれど私の心も苦しくて苦しくて
自然と涙が零れた。
もし華さんと好きになったものが
人気のお菓子だとか
可愛い雑貨だとか
そういう"物"だったら、
私は華さんに譲っていたし
華さんもきっと私に譲ってくれた。
…だけど、私たちが好きになったものは、そんな簡単に渡せるものじゃない。
どうしても、譲れない。
ううん…譲りたくない。
蒼空さんが私を選んでくれたこと
それは本当に嬉しいことで、
その事実はどんなものにも変えられない。
華さんは綺麗で可愛いくて性格も良くて、
もう何もかもが完璧。そんな人。
だからこそ………
「泣かないで、月姫ちゃん」
ギュッと華さんに抱きしめられる。
フワッと香る匂いは
いつも通り大人っぽい良い香りでー…
「蒼空のことは好きだったけど、
それ以上に私は月姫ちゃんの事も好きだよ。
だから、絶対に幸せにしてもらってね」
耳元で言われたそれは、私にしか聞こえていない。
華さんは私だけに伝えてくれた。
「っ……わ、たしも…華さんのこと大好きですっ…」
ギューっと抱きしめ返す。
華さんとは違って少し大きめに言ってしまったそれ。
周りにいた先輩達もしっかりその言葉が聞こえていたみたいで、
「私も!大好きだよー!!!」
「私だって!」
「わわっ…」
みんなでギューっと抱きしめあった。
周りから見れば何してんだ?ってなる光景だと思う。
…まあでも、今日は卒業式なのだから。
気にしなくていいんじゃないかな。
「なになに?俺もその輪に入っていい?」
「女限定だから男はダメ~」
「えー!ずりぃ!!」
後からやってきた男の先輩はそんな私達を羨ましそうに見つめていて、結局は先輩同士みんなで抱き合っていた。
華さんの顔にも笑顔が戻っていて、なんだか私も嬉しくなる。
(私もこうやってみんなで笑い合えるような卒業式にしたいな)
この光景、凄く憧れだ。



