「…………すみません」
「えっ、いや!湊くんが謝ることは何も…!
寧ろ慰めてくれて凄く嬉しいし!!
…ああ!そうだ!陽菜さんは元気!?」
話を変えるようにしてその話題に。
これ以上は湊くんも気まずいだろうし…
いや、まあ、私が気まずいのもある。
「綾瀬さん…ですか?元気…ですね」
「いつ引越しちゃうの?」
「確か25日、って言ってました」
25日
聞き覚えのある数字。
だって、蒼空さんも、
その日に引っ越すって言ってた。
「そっかぁ……寂しいね」
その言葉は湊くんに言っているようにみえて
自分自身に対してもそう告げた。
寂しい。とても。
その寂しさを紛らわすために
一口ジュースを飲む。…と。
「月姫さん…結婚、したんですか?」
「っ!!けほっ!」
突然の"結婚"というワードにむせる私。
「だ、大丈夫ですか…?」
「けほ、大丈夫…!」
なんで急に結婚なんてワードが…
口をハンカチで拭くと同時に
私の視界に映るのはキラリと輝く指輪。
………ああ、なるほど。
湊くんはこれを見てそう思ったのか。
「してないよ!!
……でも、する予定、かな。」
その指輪を見ると、さっきまでの寂しい気持ちは消えてなくなってしまった。
蒼空さんと約束したんだもん。
大学を卒業したら結婚しようって。
この指輪を見ると、
幸せだったあの日のことが脳内に蘇って
なんでも頑張れる気がする。
きっと蒼空さんはその為にこれを買ってくれたのかなって。
離れていても寂しくならないようにー…
「そうなんですね」
「……うん。でもまだ先だけどね!
その日をすごく楽しみにしてるんだ~
……って、ごめん!
今日は大学説明で来てるのに関係ない話ばかり…」
またやってしまった…湊くんはこんな話を聞くために来たわけじゃないのに。
気づけば湊くんのグラスは空になってるし…
「そろそろ行こっか!」
申し訳なくなって
急ぐように出発の準備をする。
「………湊くん?」
なのに、彼は動かず
「月姫さんの話は……もっと聞きたい、そういう気持ちになるんです。
……だから気にせずに話してほしい。
どんな話でもずっと聞いてられますから」
とても自然な、裏のない微笑み。
湊くんは自身が今どんな顔をしているのか
気づいているのかな…
知らず知らずなのか、それとも故意的になのか
彼の微笑みは
周りの人も息を飲むほどで
「第2の蒼空さんになるかも……」
「え?」
湊くんの大学生活が
少し心配になってしまった。



