「ねぇ……本当に、欲しい物ないの?」





仕事終わり。



帰ろうとしていた蒼空さんを引き止めて、家へと誘った私。





今日こそは何がなんでも答えてもらおうと思って。





「ない。」


「本当に?」


「しつけーな。ねぇよ」


「んー……」






………困る。すごく困る。



この世に物欲ない人なんているのか。






「てか、なに?なんでそればっか聞いてくるわけ?」





何回も私がそんなことを聞くから



蒼空さんもどこか怪しげに思っちゃったみたいで





「いや~…蒼空さんももう退職しちゃうわけだし、そのー…今まで頑張ったで賞、的な、ね?」





まあ隠すことでもないかと思って、暴露。





「ああ、それで」


「うん。だから何か欲しい物ないかな~って……ん?なになに?」





ちょいちょいと手招きする彼に近づく私。



床に座る蒼空さんはそんな私の手を取って、軽く引っ張った。





「ちょっと、蒼空さん…?」


「んー?」





ギューっと抱きしめられて嬉しいのはもちろんだけど、



今は、それよりも







「欲しい物は……っ、ん ……」






ああ、もう…ダメだ。




とろけるようなキスをされては


何も考えらんない。







「っ……はあ、…」






呼吸が乱れて、目元が潤む。



視界に映るのはいつものように余裕そうな顔をする蒼空さんで。






「考えとく」


「……約束だよ」


「ん。」







そして、再び、キス。





……本当に考えてくれるのだろうか。