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夜空の下で












「蒼空さんっ、何か欲しい物ない?」


「ない。」





えぇ……即答。





旅行ライターの依頼も終わり、2日が経った。



蒼空さんが退職する日まで残り5日。






それまでには何か蒼空さんにプレゼントしてあげたいな~…って。



今まで仕事頑張ったで賞、的な、ね。













「蒼空は甘い物がいいんじゃない~?」


「えー…やっぱりそうなんですかね~…」





蒼空さんが依頼で事務所にいない今、私は机に突っ伏しながら心音さんと会話をする。






「甘い物だったらなんでも喜んで受け取ると思うわよっ」





そう言う心音さんは蒼空さんのためにチェリーパイを焼くと言っていた。



じゃあ私は甘い物以外をあげた方がいい気が…






「陽葵さんは何か用意してるんですか?」





デスクにいる陽葵さんにも質問を投げかけると





「僕は名前入りボールペンをプレゼントしますよ」


「あら!それもいいわね~!」


「社会人にもなると書くことが多くなりますからね」


「なるほどぉ……」






みんなもう準備出来ているんだなって。



しかも、ちゃんと蒼空さんのことを理解している上での物を。






(私だけか……)






まだ準備できてないのは。






そんなに深く考えなくてもいい事だと思うけど、



なんかこう……あっと驚くような、そして喜んでくれるような。そんな物をあげたい。






だから蒼空さんが今本当に欲しい物を知りたいのに、毎度「ない。」の一点張り。






あるだろ。何か。絶対。