蒼空さんは私にキス以上のことを求めようとしない。「したくなる」とは言っていたけれど、それも実際のところはどうなんだろう。
私だけが「やりたい!」って思ってるだけなのかも。
(まあ色気ないもんね、私。胸だってこのザマだし……)
チラリと目線を下におろす。
私の瞳に映るのは、
ぺったんこな胸ではなく
「……………。」
胸らへんで蠢く
「………ひっ…」
大きな蜘蛛だ。
「ひぃやぁあああ!!?」
デカッッッ!!!!
なにこれなにこれなにこれ!!!??
乾かしていた服もドライヤーも、わけがわからなくなってぶん投げてしまった。
ガコンッッ!!と大きな音を立てて落ちたドライヤー。
壊れたんじゃないか、なんて心配してられない。
私の頭の中は
キモい!
デカイ!!
ヤバい!!!
の、3つだけ。
虫はわりかしビビらない私だけど、さすがにこの大きさはビビる。
(足めっちゃ長いし!キモっ!!)
服についてるソイツを早く取ってほしくて
居ても立っても居られなくなった私が向かった場所は、
「そ、そらさっっっ!!!」
「は?お前何して…」
「蜘蛛!!蜘蛛がいるーっっ!!!」
「ちょっ…分かったから!いいから落ち着け……っ!?」
バッシャーーン!!!
大きな音ともに身体中が温かいもので包まれる。
それは私達が露天風呂の浴槽に落ちてしまったからで
「いっ…てぇ………」
蒼空さんの声が近くに聞こえる。
人間ヤバい時って、その時の状況なんて考えられなくなってしまうらしい。



