「ち、がうし……」





いつものように強がる私。



困らせてるって分かってるから、
余計に強がってしまう。





「大丈夫」


「っ、」






「俺はもう月姫しか見てない」






とても優しい口調で


不安を取り除くように。





「これから先ずっと」





頬に蒼空さんの手が触れて





「俺の隣はお前だけだよ」





微笑む彼は、私の頬に伝う涙を拭う。





なんでこうも


欲しい言葉を分かってるんだろう。




蒼空さんに言われるたびに

胸の奥があたたかくなって

ホッと安心する。





大好きな人にそう言われちゃうと


信じたくなるのは確かだ。



彼女もきっと彼のことが大好きだから、
ずっと信じて待ち続けてた。






「私も、蒼空さんしか見てない」





彼の手が離れないようにその上から自分の手を重ねる。





この手を離したくない




この先隣にいるのは


ずっと蒼空さんがいい。






背伸びをして彼に近づく。



今この空間には私と蒼空さんしかいない。




外はもう暗くて

街灯が煌めくこの場

普段なら出来ないことも




誰も見てない。

ということが私を積極的にさせる。





私もきっと


キス魔なのかも。






「ワンッ!!!!」


「っ!」






キスをした直後



事務所から出てきたソラに驚いて肩が跳ねた。



 


「ソラ…」




スルリと頬の手が離れると


蒼空さんは逃がさないようにとソラを捕まえた。





「……脱走してきたのかな?」


「………、…いや」





抱きかかえて、視線は私の後ろへ





「飼い主に会いにきたんだろ」


「えっ」





遠くを眺める彼の視線を追えば





「ソラーーー!!!」





私達の元に向かって走ってくる女性が1人。




その人はとても急ぐようにして私達の元へと駆け寄った。