自然と動いた身体。



伸ばした手で


ギュッと蒼空さんを抱きしめた。





「……たまに、こうやって抱きしめて欲しい…」


「っ、」


「それだけでいい……だから、大丈夫…」





ギュウゥ…と、強く。



今の私の気持ちが伝わるように、本当に強く抱きしめた。






周りに誰かいるかもしれない


見られているかもしれない


なのに今日の私は本当に積極的だと思う。





「私のことよりも……自分の身体を1番に考えて欲しい。蒼空さんは、相手のことを1番に考える人だから…」





瞬間




私の背中に回された腕。



密着度がより高くなった。





「そ、ら…さん?」


「…………………」





抱きしめるだけで、何も発さない。



無言が続く中、


片方の手で後頭部を優しく撫でられた。



その手がとても温かく感じて









…なんだか泣きそうになった。







ゆっくりと私から離れた蒼空さんは





「………もう遅いから、」





と、私の手を取って


私の一歩前を歩く。




その後ろ姿を眺めていれば


グッと堪えていた涙が、静かに流れた。



慌てて、空いている手ですぐに拭ったから、きっと蒼空さんにはバレていない。




優しく繋いでくれるこの手も


この後ろ姿も


何ヶ月後にはもう、当たり前じゃなくなってしまう。




気が早いかもしれない。



だけど、時間が過ぎるのはあっという間だということ。





当たり前じゃなくなる時は

すぐにやってくる。






優しく私を引っ張る手。





(ダメ…まだ泣く時じゃない、)





泣く時は、もう少し後だ。



そう分かっているけれど……





「…………っ」





寒空の下





私は静かに泣いてしまった。