学部、いや、大学内でカッコいいと有名だったから、一目見て"桜井蒼空"だと気づいた。
蒼空は私を見るなり一瞬ギョッとした顔を見せた。
たぶん私が全身びしょ濡れだから。
……そして、息が荒れているから。
落ち着いてから押すべきだったと、
その瞬間に後悔したけれど
「……大丈夫。もう大丈夫だよ。」
蒼空は私の顔をジッと見ながら、そう言った。
何かを察知したかのように。
その言葉が
この時の私に安心感を与えてくれて
「っーー、」
プツン、と何かが切れたかのように
私はその場で涙を流した。
緊張が解れたんだと思う。
涙を流す私に、
蒼空は驚くどころか私の背中をポンポンと優しく叩いてくれて
「風邪引くから、とりあえず中入って。」
私の手を取って、中へと案内される。
その手はとても温かくて、優しくて、
ずっと握っていて欲しいくらい
とても心地良いものだった。
ーーーーそして
この大雨の日
河川敷の近くにあるこの場所で
私は依頼を出した。
元カレにつきまとわれているため助けて欲しい、と。
1ヶ月間という期限があったものの
その期限の終わりが近づいた時
「卒業するまではそばにいる」
蒼空はそう言ってくれたんだ。