「っーー、」




気づけば



私は優を置いて、その場から逃げるように走った。




今日スニーカーを履いていて良かったと、心からそう思う。




バシャバシャと水溜りを踏む音。



全身に雨が当たって冷たいはずなのに


今の私はそれどころじゃなくて


無我夢中で、走ってた。




行き場所は決まってる。



河川敷の方へ。



河川敷の近くだと、そう書いてあったから。



ーーーーあのチラシに。





心臓がこれでもかと早く動いている。



それは走ったからなのか、

それとも恐怖でなのか。





河川敷付近に着くと、

意外にもそこはすぐに見つけた。



普通の一軒家のような建物。


その建物には『陽葵何でも屋』の文字が。




「はあっ……」と息が荒れている。




喋れる状態じゃないけれど



早く、助けが欲しかった。

守ってくれる誰かがいて欲しかった。



今も、もしかしたら優がつけてきているかもしれない。



いつ目の前に現れるのかなんて、分からない。




怖くて怖くて、迷うなんて事は一切なく


すぐにベルを鳴らした。




少しして、目の前のドアが開く。




「ようこそ、陽葵何でも……え?」




出てきた人は、若い男の人で



この時に、初めて、蒼空と会話をした。