「あの、傘忘れちゃって…大学まで入れてくれませんか?」
「いいよ。」
「ほんとですか!ありがとうございます!!」
即OKを貰ったにも関わらず、私自身は意外にも驚きはしなくて。
この人の目。凄く優しい目をしていたから
勝手だけど絶対に入れてくれると思ってた。
「一回生だよね?」
「はい!」
「俺も同じ。だから敬語やめなよ」
「あ…じゃあ、そーするね!」
ニコリと笑えば、その人もニコリと笑う。
駅から大学までの距離の間、私達は一回も話が止まることがなく、初めて会ったにしてはこんなに話が続くのはすごい事。
本当にその一瞬で仲良くなったと思う。
会話の途中で、その人が私と違う学部だと知った。
まあ学部は沢山あるから、違ってしまうのは当たり前。
けれど
(一緒の学部だったら良かったのに)
心の片隅でそんな事を思ってた。
大学に着くと、全学部合同で行われる式会場へと向かう。
そこまでは一緒だったから、
会場に入る手前まで
本当にギリギリまで話していたと思う。
「ありがとう!本当に助かったよ」
「ううん、全然。じゃあまた」
「うん、またね!」
学部が違うから、座る場所も違う。
初めて会って、そんなに時間は経っていないのに
離れてしまったことに少し寂しいという気持ちになってた。
学部が違うんだもん。
次に会う時が来るかなんてわからない。
"またね"と言ったものの
その"またね"の日がくるかなんて、今の私にわかるわけがない。
(そーいえば、名前聞いてなかったなー…)
大学入学の日、一つの後悔ができた。