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ストーカーを追っ払って












「ではここにお名前と……」




いつものように接客をする心音さん。




……いや、ちょっと珍しいかも。




私は飲み物を用意して、お客さんが座るテーブルの前に静かに置いた。




「……書けた。」

「あ、では拝見させてもらいますね~」

「………………」




ジッ、と紙を見つめる心音さん。


私もその隣に座り覗き込む。




「えっ…!!」




その依頼内容に私は驚いて声を出してしまった。




「ストーカー…」




ポツリと心音さんもそう呟く。




そう、依頼内容の欄の所には、




”ストーカーを追っ払って!!”




大きくそう書かれてる。




「そう。最近ずっと亜美をつけてくるの!ほんと気持ち悪いっ!!」

「亜美さんのあとを…では、今日もつけてきてるってわけよね?」

「……外見たら分かる」




嫌そうに目線を下に逸らす亜美さん。




その言葉通りに窓から下を覗き込む心音さんと私。




「うわー…あれですよね絶対」

「確かにあれね…」




事務所の近くにある電柱にこっそり身を潜めている人が1人。




「ちょっと蒼空さんも見てよ」




そう携帯を触ってばかりいる蒼空さんに声をかけると、




「わっ、」




シャッ、と。


いきなりブラインドを下にさげられた。




「ちょっと危な…」

「あんまジロジロ見んな。相手はストーカーなんだろ?」

「だから顔の確認してもらおうと思ったのに」

「顔分かったのか?」

「………分からなかった」

「当たり前だ。帽子ぐらいかぶってんだろ」




マジ馬鹿だな。



なんてボソッと口にすると、壁にもたれかかり携帯を触り始めた蒼空さん。




(この携帯依存症野郎がっ…)