電車に乗ると1つだけ席が空いていて、


何も言わずにポンっと背中を押されるとその席に座らせてくれた。



私の目の前に立つ蒼空さんを見上げれば、


「ん?」と首を傾げてくる。



その姿にときめかないわけがない。



蒼空さんって平気でこんな事してくれるんだよね…



そりゃモテるわけだ、と再度気付かされる。




「あの人カッコいい~」


「今1人なのかな?」




遠くからそんな声が聞こえる。



チラリと横目で見てみれば、若い女の人が蒼空さんを見てヒソヒソ話しているから



きっと蒼空さんの事で間違いない。




(地獄耳なのかな私……)




蒼空さんは案の定聞こえてない感じだし…




「どーする?声かけちゃう?」


「1人っぽいもんね」




1人じゃないし!


ここに彼女いるんだから!!



キッと睨んでみるけど、私になんて興味がないみたいだから気づくわけがない。




(このモテ男め………)




手を伸ばして、蒼空さんのコートの裾をギュッと掴む。




「どーした?」


「…感謝してよね」


「は?なにが」




チラリとその人たちを見れば、


「彼女いるじゃん…」っと声が聞こえた。



よしよし、これでおっけい。




「あー、そういうこと?」




気づいたらしい蒼空さんはニヤニヤと笑っていて




「お前にしては可愛いことしてくれんじゃん」




ポンポン、と頭を軽く叩かれた。




「この前はほっぺにな~」


「ちょ!それ言わないで!!」




この間のほっぺにチューしたことを言われそうになって、思わず立ち上がろうとすれば




「ぎゃっ!!」




頭をガッと掴まれてソレを阻止される。




「あぶねーだろ。動くな」


「っーーー」




そう言う割には楽しそうに笑うから、


こんな事でも幸せだと思ってしまう私はチョロいのかも…