……なんて気になるのもおかしな話。
(この人の事なんて知っても無駄じゃないか。)
ボサボサになった髪を整えながらそう思う。そんな私を気にもせずに携帯を触りながら歩く蒼空さん。
「あ!桜井さんいるよ!!」
「うわ~ほんと目の保養」
「今日で見たの三回目!なんか良いことありそう!」
(良いことありそうって…蒼空さんは神様かっ)
さすがモテ男は歩いているだけでも騒がれる。見渡せば周辺の女の人達は蒼空さんに釘付けになって見ていた。
「あの後ろに歩いてる小さい子って誰?」
「えー知らなーい。何処かで見たことある気がするけど」
「何歳かな?迷子とか?」
「迷子だから桜井さんが助けてあげたんじゃない?」
(おいおいおいおい、ちょっとまて)
聞き捨てならない言葉が聞こえてキッと睨みつけた。
(小さい子だとか迷子だとか…これでも私19歳ですけど!!!)
…なんて言える筈もなく
「このクソ蒼空……」
「は?なんだよいきなりしばくぞ」
「しばいてみ…って!!ほんとにしばいた!!いったぁ!!!」
ギュウと頬をつねられて激しい痛みに涙が出そうになった。
周りの声は聞こえてないくせに、なんで私の声は聞こえてんのよコイツ…
「………よしっ、やるか」
「え?着替えないの?」
川に着くと着替えずにそのまま川に直行した蒼空さん。前は寒い寒いとか言ってたくせに今は素足で入ってる。
「この時間帯はあまり冷たくないからいーんだよ」
「うっそ…でも今冬だよ?冷たいに決まってる」
「俺は着替えるのめんどいからパス」
めんどいからって…それだけの理由で素足で入るのか。
(風邪引いても知らないよーだ)
自分の勝手だけど私は着替えちゃうもんね。そう着替えを持って事務所に帰ろうとする、と。
「………あ、待てお前。」
「んー?」
呼び止められて自然と身体はピタリと止まる。
振り向けばチャリンッと私の足元に何やら鍵を放り投げられた。
何これ……事務所の鍵?
「まだ風邪引いてるんだろ?邪魔だ。事務所で書類の整理でもしてろ」
ビシッと鍵を指差す彼は「早く戻れよ」と言いたげな表情を浮かべて再び指輪の捜索を始めたのだ。



