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川の中の指輪











「ようこそ陽葵何でも屋へ~」




扉を開けてお決まりのフレーズを言ったのと同時に、目の前に立つお客様に目線を向ける。




「あ、どうも…」




相手も私を見て軽く頭を下げた。




お客様は男性でスーツ姿にも関わらず、クツは長靴といった斬新なファッションだ。




(なんだ?釣りでもしてきたのか?)




しかも片手には虫取りアミ。



そんな不可思議な姿に私は唖然とした。




「えっ…と、すみません。ここは釣具屋ではな……」




バコンッッ!!




「イタッ!!」




突如、後ろから何やら本みたいな物で頭を叩かれて、その衝撃に顔を歪める。





「お寒い中、ありがとうございます。どうぞ上がってください。」




振り向けば、営業スマイルの蒼空さんが真後ろにいて、私に目線を向けると「このバカが」と小声でそう呟いた。




「さっさとそこどけよチビ。お客様が通れねぇだろ」




またしても小声でそう言うと私の頭を鷲掴みにし、端へと寄せた蒼空さん。




「急な階段になってますので気をつけてください。」

「あ…はい…」




蒼空さんを先頭に、お客様がついていく。



私はその後ろから蒼空さんを睨み舌打ちをし、扉を閉めた。