「ちょっと~うるさいわよあんた達~そんな大声ご近所迷惑よ」




小さなキッチンで、自家製のケーキを切り分けながら私達に目線を向けるのは、



『何でも屋』のアルバイト歴5年目に突入したオネェ系の先輩、心音(ココネ)さんだ。



身長は蒼空さんより高く、毎度バイト中はスカートで過ごす事が多い。男のくせして美脚。




「コイツが窓開けるからわりーんだよ」

「だから空気の入れ替えしようとしただけじゃない!!」

「うるせぇ!ピーピー騒ぐな幼稚園児が!!」




カッチーン。



(落ち着け私。これでも相手は先輩。言い返したとしてもまた低レベルな言い合いになるだけ。落ち着くのよ私。)




脳裏ではそう思っているものの、目は奴(蒼空さん)を睨みつける。一発ぶん殴ってやりたい。そう思った。




「コラ!蒼空あんたいい加減にしなさいよ!!ねぇ~?月姫(ルナ)ちゃん。月姫ちゃんには蒼空より大きめに切ってあげたからね」

「え!ほんと!?ありがとうございます心音さん!」

「ふざけんな!なんで俺の分がコイツより小せぇんだよ!!」




そうしてまた大激怒。甘い物好きの彼にとって、それは許されないらしい。



心音さんと蒼空さんが言いあっている中、私は陽葵さんの分を持ってデスクに向かう。




「はい、これ陽葵さんの分みたいです」

「あ、どうもありがとう。ついでにコーヒーなくなっちゃったからお願いしてもいいですか?」

「分かりました~」




言われた通りキッチンに戻ろうとした私。だけど「ちょっと待って」と、陽葵さんに呼び止められる。




「やっぱり、お客さん接客してきて」




その瞬間、ベルが鳴った。




お客様が来た合図だ。




「…はーい」




面倒だな。そう思いながらも陽葵さんに言われたなら仕方がない。



暖かい部屋を出て、私はお客様がいる扉の前へと向かった。




常に笑顔の陽葵さん。
甘い物好きで短気な蒼空さん。
料理上手なオネェの心音さん。



そして私、身長154センチで小柄な『何でも屋』アルバイト歴2年。1番年下な月姫と書いてルナと呼ぶ。



計四人で、この仕事は成り立っている。