春日野妃希という人物について。
最後までご覧いただきありがとうございます。
この物語は、期待と理想の成れの果てです。
春日野妃希には、たくさんの秘密がありました。誰もが口をそろえて「彼女はやさしい」「きれいだ」と語ります。けれど、彼女はやさしくもなければ、きれいでもない。常に自分のために突き進む、武士のような人間です。
そんな人間に魅せられたのは、年齢も生き方もばらばらな、5人。
夏凪音はプライド、雪京志郎は夢、秋柴一紀は弱さ、冬至芙美乃は自信、雨ヶ谷丈は心に、愛をもたらされました。
春日野妃希とは、いったい何者だったのか。
出会いの数だけ、答えがあることでしょう。
出会いとは、非常にふしぎなものだと思います。様々な化学反応を起こし、良くも悪くも影響を与える。そうして作用された感情によって、人生が大きく変わっていくこともある。
しかし、悲しいことですが、出会いには別れがつきものです。
出会って別れるまで、あるいはその後に至るまで、そのすべての始まりを尊べるのなら、あるいは憎めるのなら、それはきっと特別なことなのだと思います。
本編にて焦点を当てた男女5人にとって、春日野妃希との出会いがまさしくそうでした。相手がどう思っていようとも、期待してしまうのです。理想の答えを信じてしまうのです。
だからこそ、わたしは願わずにはいられません。“あなた”にとってもまた、やさしい世界であればいいな、と。
本作を読んでくださった方にとっては、この出会いはどのようなものだったでしょうか。
この世界を、どう読み解いたのでしょうか。
少しでも何かを感じていただけたら幸いです。
2022/03/29
マポン
――あなたが世界を愛さずとも。
――愛さ、ずっと。