あたしはどちらかといえば、あまり恵まれていないほうだと思う。
それを雑誌のインタビューか何かで話したら、軽く炎上した。
事務所にまで誹謗中傷が寄せられ、まあまあ大事になった。
半年ほど前のことだ。
「ファンがいるじゃないか」
「アイドルになれたじゃん!」
「あなたより恵まれていない人なんて星の数ほどいる」
「悲劇のヒロインぶってんじゃねぇぞ」
ほとんどがファンではない人からの言葉だった。
逆にファンからは泣かれた記憶がある。
事務所に言われて謝罪したが、今でも納得できていない。
やっぱり、あたしは、あまり恵まれていないと思う。
歌うことが好きだった。
人より歌うことが上手で、歌うことにしか興味がなかった。
当然のように歌手を目指し、この世界に飛び込んだ。
が、何度も撃ち落とされた。
あたしみたいなのはたくさんいる。それこそ、星の数ほど。
どれだけ努力しても、努力だけは認めるババアもいれば、努力を努力とすら認めないジジイもいた。
何度も何度もあたしの全てを否定された。
努力は裏切らないなんて嘘っぱちだ。
この世界は、運だ。運でできている。
たとえば、よく勉強した問題がテストに出たり。
たとえば、審査員の好みで特別賞をもらえたり。
たとえば、オーディションの課題曲が十八番だったり。
このドラマに出演できたのも、第一印象のインパクトが強かったから。
全部、運だ。運がよかったのだ。
――もちろん、例外もいるけれど。