『――ついに情報解禁! 実写化決定で話題を呼んだ、あの名作の主演が本日発表されました』
12月。
第3週目に差しかかり、各局で冬季ドラマの詳細が明かされ始めた。
その第一投目が、ちょうど報道されている。
夕方の情報番組。
その中で長い尺をとっているエンタメ枠で、『星のない夜』が一番手に選ばれていた。
ニュースをチェックしようと携帯をいじっていたときだった。
『連ドラ初主演同士でW主演!』
ふきだしに囲われた見出しが右上に表示された。
横にした画面いっぱいに、ポスタービジュアルが2種類とも公開される。
画像が切り替わる。
主演ふたりの宣材写真が並べられた。
『雨ヶ谷丈』『春日野妃希』
写真の下に名前が浮かび上がる。
油断するとにやけてしまいそうで、下唇を噛んだ。
「あっ! だめですよ雨ヶ谷さん!」
やべ。どっちにしろ注意されるのか。
コンパクトに折り畳みできるタイプの三面鏡に、ややむくれた顔が映る。
電源を入れたヘアアイロンを手に、背後を取られると、このまま討ち入られるのではないかとひやひやする。
「リップ塗ったばっかりなんですから。噛んだり舐めたりしないでくださいね」
「あ、あは、そっか。ごめんなさい」
気恥ずかしくなり、首をすくめる。
ニュースはすでに別の情報へ替わっていた。
寒くなってきた冬の空気を一切遮断した、黒のワゴン車の中。
暖房がついていて、もはや異空間だ。
髪に熱がとおり、よりいっそう体感温度が高まる。