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秋を楽しむことはできない運命らしい。
ひだまりに紅葉が落ちる。
枝のてっぺんまで赤らんだ並木道に、昨晩磨いたばかりのパンプスを歌わせる。
トートバッグの持ち手をかけ直し、ずんずん進んでいった。バッグからはみ出している荷物が振動した。
高校を卒業してから1年が過ぎた。
文化祭をする立場ではなくなったというのに、あれを越える仕事量に直面した。
苦ではない。
慣れもある、けど……それ以上に、わたし自身がこのときを心待ちにしていた。
表参道の一画。
開店祝いのスタンド花が飾られた、こぢんまりとした建物。
乳白色の塗装に、鉛色に浮かび上がる看板。
『lix』
夢に見た、わたしのお店だ。
3年のオリジナル舞台が無事に成功したあとのことだ。
暇を持て余していたわたしに母が問いかけたのだ。
――ブランドを立ち上げてみる気はないの?
思い立ったが吉日。
母の助けもあり、卒業する1か月前に、オリジナルブランドを発足した。