アテネ芸術高等学校。
通称、アテ高。
未来の文化を背負うプロフェッショナルの育成、輩出を目的に、芸能・芸術に特化した教育を行う、専門的な学校である。
モットーは「芸を培う」。
芸能科、被服科、音楽科、映像技術科、総合マネジメント科の、5つの学科が設けられている。
現在の生徒数は、約1300名。
各学科3クラスと少なく、毎年受験の倍率が高い。選りすぐりの精鋭のみが、門をくぐることができるのだ。
学び舎は、都内にそびえる中世ヨーロッパ風の建物。
一見、学校らしくないそこは、学校名および質の高さを売りこむがごとく、外装にとにかく力を入れている。観光地のひとつとして知られるようになった。
内装も非常に整っており、教育のための設備や道具がぜいたくに完備されてある。
卒業生には各界隈の著名人が数多く名を連ねる。
特に芸能科のレベルは高い。
今年もまた、大スターになる……いいや、もうすでになっているといっても過言ではない優等生を、送り出す。
――はずだった。
「卒業証書授与」
美声が反響する。
特別講師としてときどき招かれていた芸能科OGの人気声優が、卒業式の司会を務めるなんて、ウチくらいだろう。