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今日は朝から忙しなかった。



一日フリーだったはずが、バイトの代役を頼まれ、渋々出かけた。

バ先のレストランでは、春の新作スイーツを売り出していて、慣れないレシピに悪戦苦闘した。


家に帰っても、夕飯も風呂もできてない。
わかりきっていた事実にため息が出る。


大学生になり、ひとり暮らしを始めた。


期待で満ちた春は、早足で過ぎ、また戻ってきた。

長く感じた春休みも、あと２週間と少し。


疲労感だけがたまっていく。



時間は刻々と迫っていた。


とりあえずご飯を炊く。おかずは、コンビニで買ったお惣菜。

炊飯器のセットをし、シャワーを浴びに行く。髪を乾かしながらスマホをいじる。


いつも以上にSNSが騒がしい。


朝からずっと同じワードが発信されている。

現時点も数が増え続け、しまいには接続できなくなるときがある。


それでも、ぼくはかまわず、仲間に加わった。



『春日野 妃希』



彼女が芸能界を引退してから２年。


共演者との交流もなければ、目撃情報のひとつもない。

完全に消息を絶った。


悲劇のヒロインとして知れ渡ると、じきに居場所を突き止めようとする声は止んだ。そっとしておこう、そんな同情心の結果だった。


多くの人が心を盗まれたまま、過去の面影ばかりを追っている。

ていのいいきっかけを探し、かこつけて名を呼ぶのだ。