・・・
――ピンポン……ピンポン……!
目覚ましがうるさい。
片腕を所定の位置まで動かす。けれど何もない。
左右に振っても、いつもの感触はない。
渋々起き上がろうとすれば、頭に鈍い痛みが走った。
次いで、鼻を刺す臭い。あげくに、痺れた足。
全身ポンコツすぎる。
甲高い機械音に急かされ、なんとか首を起こした。
寝ぼけ眼で目覚まし時計を探す。
やっぱりなかった。
……というか、ここ、リビングじゃねえか。
「なんで俺……ああ、そうだった」
カーテンを閉め切っていても十分に照らされた室内は、たったひと晩で立派な汚部屋に変貌していた。
軽く10を超える瓶と缶は床に転倒。
脱ぎ捨てられた服。
やけ食いしたつまみとスナック菓子は食べかけのまま放置。
酒に浸した体臭と柑橘系の香りのタイマンは、わずかに酒臭いのが勝っていた。
「最悪だ……」
まったく記憶にねえ。
2本目のワインを開けたあたりからあやふやだ。思い出すのもだりい。
ピンポーン。
絶えず機械音に呼ばれる。音の鳴る間隔がだんだん狭まっている。
昨日もそんな調子だった。
すっかり雨が上がってしまったのが口惜しい。
こっちの目覚ましは止め方がないから困るんだ。
一度映像を見てみたら、案の定記者とカメラマンが待ちかまえていた。
どこで俺のプライバシーを調べたんだか。
応えたら応えたで被害がでかくなるのは目に見えている。
頭が痛くてしかたない。