鮮やかなフラッシュが焚かれ、シャッター音は絶え間なく響き続ける。
まばゆく覆う光の奥では、何十台ものレンズが、一方向に狙いを定めている。
都内で随一の規模を誇る映画館。
その一番広い劇場内は、席ひとつ余すことなく埋め尽くされ、シャッター音に負けず劣らずの歓声が上がっている。
カメラ、観客が注目する正面のスクリーン下には、地面より数十センチ高めに造られた、立派なステージがある。
そこには、これからスクリーンに映し出されるであろう顔ぶれがそろっていた。
「本日は、映画『未だ蒼きハルの子へ』完成披露試写会および舞台挨拶へ起こしいただき、ありがとうございます」
女性アナウンサーの進行のもと、イベントが始まった。
映画のタイトルにかけ、春季である3月に催された今回のイベントは、一般応募の倍率がかなり高く、応募フォームや問い合わせ窓口がパンクしかけたほどだった。
青春真っただ中の中高生に対象をしぼったにもかかわらず、だ。
イベント開始ゼロ秒でこの熱気なのもうなずける。
競争率の激しい席取りをかいくぐってきた歴戦の猛者たちの興奮が、じかに伝わってくる。