「……怒った?」
ちょうど階段をおりようとした時、ここまで走ってきたのだろう息を切らした神茂にそう問う。
その表情は言葉通り怒っているような顔つき。
「いらね」と拒否られていたにも関わらず、みんなの前であんなことをして、怒らないわけないよね。
「……怒ってねーよ」
「嘘。顔に出てるし」
言えば、神茂はパッと手で顔を覆い隠した。
そして、少し小さめな声で
「…ちげーよ、これはその……ニヤけるの、我慢してて……」
見た目に似合わず弱々しい声で
「デレデレしてるのはカッコ悪いし……神崎サンにカッコ悪いところ見せたくないから……」
ピアスを付けている耳さえも真っ赤にさせて
(ほら。照れ屋なんだよ神茂って)
こんなにも可愛い人はいないと思う。
「ふふっ」
「なっ…笑うな!」
「だって…ふふっ」
「っーーー!」
朝のあれも、ニヤけるのを我慢していたから、さっさと行っちゃったのかな。
そう思うと見た目に反して可愛くて仕方がない。
「笑うなって!」
グイッと引っ張られた腕。
「あっ…!」
そしてまた顔を赤くさせる神茂は、きっとこの距離のせいで。
慌てふためく神茂は目が泳いでいるし、
けれども不意に見せられる男の顔には
不覚にも、キュンとしてしまう私。
ちょうど人気のないこの場所。私達の教室からは未だにざわつきが落ち着いていないらしく騒がしい。
微かに聞こえる言葉の数々を耳にしながら
私達は何度目かのキスをした。



