携帯を持つ手を前へと伸ばす。
それは勿論返す為に。
ズンズン私の元へと向かってくる神茂。
徐々に近づくその距離だけれど、私は優雅に今日の晩御飯なんだろとか考える。
が。その優雅さは一瞬にして消え失せてしまう”その時”は突如現れるのだ。
「……ん?っえ。」
画面にヒビの入った携帯を持つ手。その手首を掴まれて、グッと力を感じた。
そして気がつけば、後ろは壁で、間近には神茂の顔。
それから自身の唇に柔らかい感触。
カシャーン
あの画面にヒビの入った携帯が、床に落ちる音。
この音、確実割れたな画面。そうどこか脳内の片隅でそう思っていたが、
「…………っ」
唇に触れる、これは一体…?
そして今に至るというわけだ。